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第3話 冒険者ギルドで

Author: うきぐも
last update publish date: 2026-08-26 00:07:52

冒険者ギルドで突如話しかけられた俺たち

”全身皮剥狂”ザクトズルト

それがオーク部隊の小隊長の名である

「ぜんしんかわはぎきょうってすごい肩書だなあ……」

マリチは苦笑する

俺たちに声をかけてきた騎士風の女性(どうやら隣国の王立騎士団の小隊長さんだったようだが)の語った内容、それはある地方都市の領土内にある小さな村……そこがオークの一個小隊に占拠されたというのだ

二人の冒険者はそこの村出身で、地形や街の構造をよく知る者たち

そしてまだ生存者も多いであろう村に今すぐにでも救助に行きたいと切望している

話を聞きながらぼそぼそと話をする俺とマリチ

「ザクトズルトっていやあミッションで初期に戦った記憶あるなあ」

「今だと多分通常攻撃で1発だと思う」

「何か気になることでも……?」

騎士小隊長が怪訝そうな表情で聞いてくる

「え、あ、いや何でもないです。まあ行きますか。退治に」

あまりにも日常のテンションで答える俺をみて、さすがに心配そうに聞いてくる

「密林の王を討伐されただけのことあって、さすが剛毅ですね。だがしかし!ザクトズルトは残忍な性格で、しかもなかなか狡猾だと聞きます。もしかしたら生かした村人を人質に使うなども平気でやってくるかもしれません…!」

「そ、そうですよ!貴方たちお二人でもあの屈強なオーク小隊にはさすがに手こずると思います…」

「なんせ数が多いですし!」

地元出身者の二人の冒険者も口々に焦りと伝えてくる

「まあ……」

俺はおもむろに冒険者二人と騎士団小隊長の手をつながせる

そして冒険者のうちの一人の青年の肩に手を置いて振り向いた

そして静かにうなずく

マリチがパッと俺の手を掴んで転移魔法を詠唱する

ブォォォン

『えええーーーー』

ミッションで一度行ったことのある場所には基本的に転移可能だ

まあ、平たく言うと俺たちはこちらの世界のどこでも大体いける

騎士は領土内の人だし冒険者たちも出身がそこだから、つまり全員そこに行ったことのあるメンバーなのでこの方法での移動が可能である

突然の出来事に動揺する3人を引き連れ、一瞬にして村の入口に到着した我々

「おお…懐かしいなあ…二年ぶりか…」

「うん…でも入口の門とかは壊されてるし…」

「そしてあの邪悪な紋様。奴らの仕業だな」

騎士小隊長の指さす方向には獣人たちが信奉する神のおどろおどろしい紋様が、血のような色で殴り書きされている

「よしではさっそく姿隠しの薬をつかって侵入するぞ。皆は私の後ろについてきてくれ……って、え、ちょ」

小隊長には悪いが、話を最後まで聞くことなく俺はずんずんと歩き始めた

マリチもぴょこぴょことついてくる

「お二人!?」

一つ目の小道を曲がると、そこにはオークの兵隊がいて当然見つかる

「寝かせ~~」

マリチの範囲化された睡眠魔法が瞬間的に完成し、相手は吠える間もなく夢の中

「は、早……」

冒険者のうちの一人は魔導士なようで、詠唱の速さに目を丸くする

「あーもしかして眠らせるより黒魔法の方が早い?」

マリチが怖いことを言う

そう。寝かせて進むよりも範囲攻撃魔法でワンパンで消していく方が早いのだ

ゲームの中だったら迷わずそっちだったが、今は現実に目の前に相手が存在しているのでなんというか……無駄な殺生はしなくていいかという謎の心理が発生している

「まあ、様子見で寝かせでいいと思う」

「そか。んじゃこのままで」

マリチはニコッと笑いながら目の前に10匹以上集まってこっちに弓を向けようとしているオーク集団を全員まとめて地に伏せさせた

「すごい……」

「けど、こいつらが起きてきたら……」

「ゆ、油断されるなよお二人」

冒険者二人のみならず、騎士小隊長も少し声が震えている

そうこう言いながら進んでいくと目の前に少し小高い丘が現れ、その上に屋根の尖った建物が見えてきた

「あそこだな」

俺は剣を抜きながらいくつかの魔法を使う

「攻撃速度上昇および物理障壁」

ざわつく後方

そういえば多分3人には俺が何のクラスかもわかってないかもな

初期のソーファンにはルーンナイトは存在しない

「あれは教会か!あそこにボスが?」

騎士小隊長の意気込みに対し、俺たちはコクンとうなずいた

「あ」

「そういえばそうだった。姿隠しと音消しだね」

マリチはおもむろに空中に魔導書を浮かべ、呪文の詠唱を始めた

その瞬間、5人全員の姿が消え、足音がしなくなる

「あー説明しとくんですけど、多分あの教会の中には生きている村人の方々が人質になっていて、ザクトズルトはそれを盾にしてくるんですよ」

「な!!」

「なんと卑劣な……」

実はミッションで一度体験しているので相手の行動は読めている

「なんでこっそり隠れて侵入して、一撃で倒します」

「えっ」

姿隠しの術は激しい動きをすると解けてしまう

教会の周辺には多くの見張りのオークがうごめいており、俺とマリチ以外の3人は緊張の極致だと思われる

しかし俺はそうはならない

なぜなら相手を見るだけで何故か自分と比べてどの程度のレベル差かわかるという、ソーファン仕様がそのまま適用されているからだ

そして、この村にいるすべてのオークが

<練習相手にもならない>

と表示されている

ドアを蹴り飛ばしたら魔法が解除される可能性がある

ので、そっとドアノブを回して侵入する

「あ”ーーー?」

「んあ”?」

ドアのすぐ横にいたオークたちが何やら声を上げ首をかしげる

基本的に獣人たちは共通語をうまく話せない

だが高位の者ほど知力も高くなっていくようで、俺の経験ではオーク族の皇帝や、その側近レベルになるとそこそこ流暢に言葉を扱えた気がする

「dsjf;ojbj:f*:j!(なぜ今ドアは開いたんだ!)」

礼拝堂の奥からオークたちの言葉で大きな声が響いてきた

どうやらあいつがボスのようだ

なにやら叫んでいるのはオーク族の言葉だが、ある程度は理解ができる

「警戒しろおまえら!!!」

鋭いな

寄せ集めの獣人族部隊とはいえ、小隊長を務めるだけはある

戦闘的な感度はあるということか

足元に気を付けながら奥に進んでいくと、奥の小部屋の前にそいつはいた

そして部屋の奥に住民たちは集められているようだ

部屋の中に見張りのオークの気配はない

眠りの魔法をつかうと姿隠しの魔法は解除されてしまうので、方法は一つ

ゴスッ

俺はおもむろに振りかぶってザクトズルトに振り下ろした

ひと際大きいオークのボスが真っ二つになるのと同時に、マリチが見張りのオークに攻撃を行う

「範囲氷撃~~」

氷魔法が発動し、地面からでた氷の柱が敵を一瞬で凍り付かせる

そして…

「そろそろみんな起きてくるころだね」

そういいながらバァン!!とドアを開け放ち外に出るマリチ

そして見晴らしのいい丘の上で両手を開きながら詠唱

「天空を舞う星々の欠片よ、我が求めに応じ大地に降り注ぐがよい~~」

『は?』

騎士小隊長と冒険者の3人が呆然とする中

空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから巨大な隕石群が落ちてきた

俺はぼそっと呟いた

「流星群(メテオシャワー)で全員潰します」

「え」

「ちょ」

「何を」

『ええええーーーーー』

三人の絶叫を聞きながら、俺はふと思いついてマリチに声をかけた

「あ、村の家とか畑は?」

「え?」

俺とマリチは一瞬止まったが、時すでに遅し

魔法陣を通して落ちてきた巨大な隕石群は、次々と村中のオークたちを『様々な建造物』もろとも押しつぶしていった

―――――――――――――――――――――――

ゲームだとグラフィックとして描かれている建造物や地形は不変である

建物の中で炎魔法を撃ちまくっても火事にはならない

だが現実では違う

現実のようで現実ではなかったオンラインゲームの世界が

現実じゃないようで現実の世界になったことにまだ適応できてなかった

マリチの落とした星々のかけらは村のオークたちを蹂躙したが、それと同時に村の地形をも変えてしまった

「……どうせオークどもに破壊され、いたるところが汚染されていたので構いませんよ」

「むしろこれで一からやり直せます!」

村出身の二人は気丈にもそう言ってくれていたが、騎士小隊長(名前をようやく知ったが、クリクラさんというらしい)は違っていた

「この度の任務はあなた方のおかげで見事完遂できました。が、目に余る破壊行為、じゃなかった、積極的な攻撃行動および教会の損壊について、少し本部の指示を仰ぎたいと思います。あ、いえ、お二人のことを悪く言うつもりもありませんが、その、あまりにもなんといいますか、規格外の戦闘力というか被害というか……」

かなり言葉を選んで無理やりフォローしている様子が伝わってくるが、どう好意的に解釈しても『やりすぎでやばい奴らなので本国に通報したい』と言っているように聞こえる

「今回の件にあたって、報酬や国家認定証の授与などに関しては……」

クリクラが形式的に話を進め始めたのをみて俺は素早くマリチに目配せした

すぐさまうなずいたマリチの前に一瞬で魔法陣が出現する

「あ、忙しいのでまた!!」

ブォォオン

すかさず転移魔法で逃亡する我々

「あ、待ちなさい!」

とっさに手を伸ばしてきたクリクラの手をかわしてなんとか脱出した

……そして到着したここはマリチの家の庭

「クリクラさんはなんか言ってたけど俺たち既に持ってんだよなあ」

「じゃん。国家最高レベル冒険者名誉証書」

マリチは白銀に光るカードを空中に浮かび上がらせた

「ほーー。こんな感じに出せるんだ」

俺も手のひらを上に向けて出してみる

なるほど所持品はこんな感じで取り出せばいいのか

こっちの世界は便利すぎる

全身皮剥ぎオークを倒してもらえるのは『国家認定冒険者の証・初級』

だが俺たちはすべての国ですべてのミッションを既に制覇しており

社会地位としてもマスタークラスなのだ

ただ……まだこの新しい世界の仕組みがわかっていない今の段階だと、もうしばらくは自由に動き回っていたいので、国家権力からは離れている方がよさそうだ

まだ経験していないのに既に持っている許可書等がどの程度認められるのかも不明だしな

「ところでヨーイチ。扉は?」

そういえばそうだ

マリチに言われて俺はマリチ家の裏にある巨大な古代樹の下に向かった

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